毎月何冊かの本を紹介してくれるトップポイントという雑誌がある
「一読の価値のある新刊書」を紹介すると銘打っている
私は興味を持って目を通しているが
最新号が手元に届いたのでめくっていたら面白かったものがいくつかあったので紹介しよう
「中国人のビジネス・ルール 兵法三十六計」
梁増美著(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
中国人は、身内の人間「自己人(ツーチーレン)」と外部の人間「外人(ワイレン)」にまず大別するという
身内の人間には「儒教」で接し、外部の人間には「兵法」で接するという
その「兵法三十六計」が中国ビジネスの行動指針になっているという
満天過海(まんてんかかい):世間をだましてうまく逃れる
以逸待労(いいつたいろう):こちらは休んで敵が疲れるのを待つ
無中生有(むちゅうしょうゆう):何かをでっち上げる
暗渡陳倉(あんとちんそう):敵の目を別の場所に向けて、密かに目的地に行く
調虎離山(ちょうこりざん):敵を不慣れな環境に誘い出して攻める
遠交近攻(えんこうきんこう):遠い国と結んで近くの国を攻める
などなど、とにかくこういう「兵法」が中国人の行動原理だという
私から見れば、こういう行動原理は人間関係を悪くする不誠実な行動と思うのだが
とにかく中国のビジネス行動の原理だという
勝つことが全て、相手は敵なのだ、敵とは戦わずして勝つことを最上と考えるという
こういう中国の人とうまくやるためには、兵法が使えない「自己人領域」に入ることだという
「心の傷」は言ったもん勝ち
中島聡著(新潮新書)
昔なら我慢して乗り越えていたような心の傷に、さまざまな病名がつけられるようになったという
これは現代人のストレスに対する耐性が低くなったためと考えられるようだ
著者はセクハラの問題点を3つ指摘する
1,単なる嫌がらせや、特に問題にすることもないことを、犯罪扱いするようになっている
2,女性を「嫌であっても断れない、弱い人間」とすることで、女性を過剰に保護する社会を作り上げている
3,被害者がセクハラと言えば、検証は一切されずに、一方的にセクハラだとされる
セクハラの概念が現れて以来、人々は物事を深く考えることなく、単純に二分法的思考で判断するようになって
被害者の訴えにより加害者が一方的に断罪される現代社会のあり方は、「被害者帝国主義」と呼ぶことができるという
問題の解決は、客観的証拠に基づき冷静におこなわれるべきで、「被害者=善」、「加害者=悪」という二分法的思考による
感情的な反応に走ることは慎むべきであると指摘する
そして、物事にいきなり法律や規則を適用して白黒をつけるのではなく
グレーゾーンに当たる「辺縁(へんえん)」を尊重することが大切だと結ぶ
「心に響く99の言葉 東陽の風韻」
多川俊映著(ダイヤモンド社)
不楽本座(本座を楽しまず):今の状況を大切に
結構な環境にいるのに、それをありがたく思って受け止めればいいものを、
何か他にいいのがあるかも知れない、などと心がブレるのだ。
その時、天人はダメになる
善悪の両者に汚されない:評価を求めない
「陰徳を積む」という言葉がある
善行は人知れずソッとするものだが,我々はそれがなかなかできない
その行為が善ければ善いほど、人に知ってもらいたいという気持ちが強くなる
しかし世の中、そう易くない
過小評価されたり、無視されたり
そうすると、気分は悪いし、その評価を下した人を、心の中でののしることにもなる
せっかくの善い行為も、水の泡どころか、すでに悪に変貌している
雨の日は雨を愛そう:そのままを受け止めよう
雨がシトシト降る日も風の日も、ソッとそれに寄り添っていくならば、今まで気づかなかった新しい風景が展開するだろう
心一境性(しんいつきょうしょう):心を散漫にさせない方法
欲望と苦とは、本質的にリンクしている
あれもこれもの生活は、心を散漫にさせて止まない
これは無防備ということに等しいから、よからぬものにどうしても付け入れられる
その散漫になった心を調整するには、何か一つの対象に集中させるほかにない
阿頼椰(あらや):過去を背負って生きる
我々は過去を一切背負い、今ここに在る。だから、過去を捨てることはできない。
しかし過去を土台とし、跳躍することはできるのだ。
ひとまたぎの距離:人はたやすく変化する
「無気」とは、善でもない悪でもないニュートラル
だから人はたやすく善の方向にも悪の方向にも変化する
今どんなに良好でも、ひとまたぎで悪の世界に入り込む
人間って、危ういのである
依法不依人(えほうふえにん):私たちは危ない存在なのだ
人は間違いを犯しやすいという一点を、導く者も導かれる者も肝に銘ずれば、その関係は豊かなものになるだろう
以上、「トップポイント」2008年8月号より
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