「地震の記憶が消えないうちに」

10月23日(土) その2

 そこでようやく私は思い出した。帰ってきてすぐに仏壇のロウソクと線香をつけたことを。「家が火事になってしまう」と叫びながら体を家の方に向けて走り出した。それと同時にまた揺れた。激しい揺れと地割れで思うように進まない。頭を両手で思いっきり揺さぶられるような激しい揺れだった。何度も転びながら家に向かった。「一人で家に入っちゃダメ」と母が叫びながら私のあとを追ってきた。地面を這うように二人でなんとか2階に上がっていくと火は消えていた。

火が消えていることを確認した私たちは「携帯電話と電池を持って出よう」ということになり、散乱している部屋からそれらを探し出した。そしてまた一緒に外に出た。今度はヒールの靴ではなく長靴を履いて出た。私は今夜会う約束をしていた友達に電話をかけてみた。しかし、つながらない。次に長岡の蓬平町に嫁いだ妹にもかけてみたがつながらない。母もかけるがつながらない。電話がダメなら『そっちは大丈夫?』とメールを送信した。しかし送信できない。そんなことを数回繰り返していてようやく気付いた。すでに携帯の電波は「圏外」だった。

「やすよ」君のお宅の敷地内にあるという自動販売機の写真(11月23日撮影)

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