「地震の記憶が消えないうちに」

10月23日(土)その1

   仕事の後、友達と会う約束をしていたが残業しなければならないとメールがきた。それまでの時間をどうしようか迷った結果、一旦長岡の職場から家へ帰ることにした。夕方5時45分、いつもの経路で家に戻ってきた。

   我が家は雪国特有の高床式の家になっている。1階部分の車庫に車を入れた。母の車が先に入っていたためその後ろにつけて止めた。2階のリビングに行くと、母が夕飯の支度を終えて出かける準備をしていた。「美容院に予約を入れたから車を入れ替えて欲しい」とのこと。母の準備が整うまでの間、私は仏壇にロウソクと線香をつけた。

  母の準備ができたため二人で1階に下り、それぞれの車に乗り込んで2台とも家の前の道路に出た。その時だ!自分がハンドルを握る車がポンポンと跳ね上がり始めた。まるでスプリングの良く効いたベッドの上を跳ねているかのようだった。車の故障だと思いシフトレバーをパーキングに入れてみたがその動きは止まらない。「何なの?」と思いながら、自分の車のライトが照らす母が乗り込んだ車の方を見てみると、家の前を流れる川の方へと跳ね上がりながら進んでいた。『このままでは川に落ちてしまう』と思い、車の窓を開けて「早く車から降りてー」と何度も何度も叫んだ。やっとの思いで私は自分の車から出てみると、その足元には地割れと液状化現象なのか何なのか泥水が溢れてきた。そこで始めて恐怖心が湧いてきた。それと同時に揺れがおさまった。

   すぐに母にかけより「今のは何?何なの?」と問い続けた。そこでやっと気付いたが周りの明かりがすべて消えていた。母は「これは地震だ」と言った。『地震ってこんなに揺れるものなの?爆弾か何かなんじゃないの?』と頭がパニックになり言葉にならなかった。そうこうしているとまた激しく揺れた。今度は上下ではなく、前後左右と表現したらいいのかとにかく立っていられない。母と二人、その場にしゃがみ込んだ。

「やすよ」君の自宅の写真(11月23日撮影)

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