平成17年01月30日(日曜)その2

せっかく水戸まで来たのだからこのまままっすぐ帰ってはもったいないような気がしたことと
そう滅多に水戸に来る用事はないだろうと言うことで
日本三大庭園と呼ばれる偕楽園
確か金沢の兼六園と、岡山の後楽園だっただろうか、そしてここ水戸の偕楽園
この3つだと思うが、ま、とにかく有名なお庭だ
このお庭に行こうと思い駅からタクシーに乗った
じつは有名なお庭があると言うことだけで偕楽園などと名前が出てこなかった
そこで、タクシーの運転手に「有名なお庭があると聞いているのですが、そこまでお願いできますか」
と話したら「えぇ・・・有名なお庭ですか・・・」と歯切れが悪い
とにかく有名なお庭で通じるとおもっていたのに運転手には通じない
「梅がきれいなところだと聞いていますが」と言ったら
「ああ、偕楽園ですか」「はぁ、たぶんそれだと思います、遠いのですか」
「いや、すぐそこですよ」「じゃ、おねがいします」
どうもあまりにも当たり前の有名どころなものだから運転手は戸惑ったようだ

タクシーの中で何か説明してくれているのだが
どうもよくわからない、運転手の滑舌が良くないことと
名前を言われるのだがそれが何なのかイメージが伝わらない
結局、帰りも自分のタクシーを呼んでくれと言うことだけ伝わった
おろされた場所は偕楽園の東門とかいう駐車場

途中、義烈館なるところに寄ってみた
その建物の入り口付近に「吾唯足を知る」という石の置物というのだろうか
どこかで見たことのある置物、だけど、最近あまり見かけないが
よくよく見るとうまいこと作ってあるなと感心させられるものだ
誰がこんなうまい組み合わせを考えたのだろうか
こういったトンチが効いた遊び心は江戸時代に多くあった
私はここに書いてある「吾唯足を知る」という言葉が好きだ

偕楽園入り口にあった案内板

偕楽園の梅は確かにすごそうだ
とにかく梅の木が見渡す限りという状況だ
少し早咲きの梅もあるようだが、ほとんどはつぼみさえ付けていない

とにかく広い

これすべて梅の花が咲いたらさぞかしきれいなのだろうと想像させられた

紅梅、白梅といろいろな種類の梅の木が植えられているようだ

ここのお庭を見ていたら梅だけのお庭でないことを初めて知った
奥の方には竹林があり、またその反対側には松の木が植えられている
「松・竹・梅」がそろっている

孟宗竹だという

風が吹くとザワザワとうるさそうだ

なにかかぐや姫が出てきそうな気がする
日本の昔話はすべて当たり前にあった風景の中から語られているにに
我々がこのような竹林を間近にする風景を失ってしまっている

竹藪、そう、「たけやぶ」そのものだ

こんな風景は昔の日本の当たり前の風景なのだろう

一人で良く整備された園内を歩いていると心が落ち着いてくる

なにやら藁葺きの門が見えてきた
光源氏の心境になって姫君の元へ訪ねてゆくようなウキウキした心で足取りが軽くなる

立派な松があちこちに植えられている

偕楽園から千波湖(せんばこ)を望む
場所によっては早咲きの梅もあるようだ

偕楽園の出口には今までと違った雰囲気が広がる

さてどうしようと思って時間を見たらお昼を回っていた
ちょうど駅に向かう路線バスが来たので乗り込んだ
途中「大工町」という地域が目に入った
どうも「常陽」というような看板が目に付いた

駅まで来てかえろうかどうしようかと改札口まで来てみたら
観光案内所が目に入ったのでふらっと寄ってみた

タクシーに乗ったとき、モダンなかたちをしたランドマークが目に付いた
そのランドマークはどうも水戸芸術館と言うところのシンボルタワーのようだ
案内所でパンフレットをもらってみた
案内書の女性が声を掛けてきたので
どこかお昼を食べるところ無いですかと尋ねたら
アンコウ鍋はどうですかという、しかしそれは昨夜食べた料理だからと辞退したら
では「ねばり丼」というのはどうですか、ときた
ふむふむ、それはおもしろそうだと言うことで場所を教えてもらって早速行ってみた

場所は駅前のスターバックス先の本屋さんの地下にあった
観光案内所のお勧めできたと女将に話したらうれしそうに店内に案内してくれた
案内所の女性がこのパンフレットを見せればワンドリンクサービスしてくれるからと言って
私に渡してくれたパンフレットも同時に見せたら女将は、ハイハイ、ビールをグラスでサービスさせてもらいますと

ねばり丼なるものを食してみた
これは話題性がポイントのドンブリだ
もちろん味は悪くない、というよりネバネバの、混ぜ混ぜの、なんと表現して良いやら
一度話の種に食べてみても良いと思う

ねばり丼が出てくるまでの間、水戸芸術館のパンフレットに目を通していた
かなりの設備のようだ
チョット寄ってみようかと思い始めていた
パイプオルガンが設置されているという
よく見たら、毎週土曜日午後1時半に演奏があるという
時計を見た、1時過ぎだ、間に合うかもしれないと思った
ねばり丼を食べ終わって1時半に近づいていた
女将に水戸芸術館に行くにはどうすればよいのかと尋ねた
どうも反応が悪かったが、やっと理解してもらえたらしくバスの便を教えてくれた
バスでは間に合わないかと思いタクシーを呼んでもらうことにした

水戸芸術会館に到着した
どこでパイプオルガンを弾いているのかと探してみたら
ホールというより通路のような場所で演奏されていた


今ひとつ響いてこないと思った
それもそのはず、ホールのあちこちの扉が開いており、通路となっている
さらにはホールの脇でチケット販売をやっていたり、ま駅のチケット売り場のような状況だ

演奏が終了した
どうしようかと思った
駅のチケット売り場を見たら相変わらず何人かの人がカウンター越しにオペレーターのお嬢さんとやりとりをしている

そんな状況を見ていたら、受付の脇に見学会申し込みのポスターが貼ってあった
見ると館内を係の人があちこち説明してくれるという
だが、今日はシアターは夕方からの上演があるため見学できないとなっていた
一番みたいところが見られないようだが、あちこち効率よく見せてくれるようだから申し込んでみようと思った
見学時間は2時半からとなっている、まだ30分以上時間があるが喫茶券付きだからそれでお茶でもしていようと思った

この建物の中に入った瞬間わたしは普通のまちなかの雰囲気とは違う「チョット違う人種」が目に付いたが
喫茶室というよりコーヒーコーナーとでも言おうか、そこでは普通のまちなかの公園のような雰囲気があった

時間になったので受付のところに戻った
私の頭の中では事務局の男性職員が案内してくれるのかと思っていたら
なんと、先ほどのオペレーターの女性が案内してくれるという
そして、私はお願いしてみた、できればシアターを見てみたいと
そしたら、では特別に少しだけ見てみましょうかと案内してくれた
すごい、ここはシアターが3階席まである
彼女はさりげなく説明する、「グローブ座をイメージして作られた」と
なるほどなるほど、そして「三階は舞台の後ろ側まで観客席がある」と
なに、舞台裏まで見られるのかと驚いたら
「あまり後ろまで見られるのは好まれないようです」と付け加えてくれた、そうだろうなと思った
今日は「ベニスの商人」をやるという
「お時間がよろしければご覧になりますか」と言われたが残念ながら帰らなければならないのでとお断りした
この案内してくれたお嬢さんはとても優しい目をした素敵な方だ
私のわがままを聞いてくれてリハーサル中の舞台をそっと案内しくれた
舞台は意外に小さい感じを受けたが、収容人員は600程というから結構入る

これは二階席から見た舞台だ
舞台と客席との間を遮るものが無く、挙げ句の果てに三階からは舞台の裏側まで席がある

三階席からだとかなり真上から見下ろす感じがする

今度はコンサートホールを案内してくれた
座り心地の良い椅子だ
長岡のリリックの椅子より座り心地が良い
ここは自前の楽団をもっているという、そしてその顧問としてあの世界のオザワが就任しているという
先日長岡にも慰問で小澤征爾さんがおいでになられたと話したら
そのとき水戸室内管弦楽団が同行したと説明を受け
そうか、そうだったのかと初めて認識し、地震被災者を代表して感謝の意を表した

ステージから客席を見た、客席数はやはり600ほど
天井からは上下する音響反射盤が印象的だ

座席に座ってみて下さいと勧められて座ってみたら、なかなかの座り心地だ

ここは水戸市民演劇学校という講座があるという、1年間の受講で土日にレッスンを積んでいるという
そう、そう、キチンとした育成システムがないと演劇人は育たない、すばらしいと感じた
さらに、水戸市の年間予算の1パーセントをここの運営費に充てることが決まっているという

その後、美術館やタワー
ちなみに、あのモダンなランドマークタワーはDNAをイメージしているとのこと
水戸市制100年を記念して作られた施設だから高さは100メートルとのこと
展望台に上がるエレベーターは日立のエレベーター
展望は宇宙船から地球を眺めるような感覚だ

結局あちこち見させてもらい、説明を聞かせてもらって
私としては、この館内ツアーは十分満足のいくものだった
何が良かったのかと言えば案内をしてくれたお嬢さんの的確な知識と
マニュアル通りの形式張ったものではなく、その場の状況に応じた臨機応変の対応
そして、普段自分が感じている自分の目線によるコメントを織り交ぜた対応が良かった
私のような旅行者にとっては地元の方の自分たちの郷土を愛する気持ちの中で
もてなしの心で旅行者に対応してくれ
私の いろいろな質問に一生懸命答えてくれた心遣いに感謝したい

あまりタクシーの運転手に土地のことを質問しても十分な案内をもらえなかったことで
茨城の印象はあまり良くなかったが
ここ、水戸芸術館の優しい目元のお嬢さんにあえたおかげで
私の中の水戸の印象は素敵なものとなった

同じことが長岡でもいえるのかもしれない
長岡に初めておいでになられた旅行者の方がタクシーに乗って
「長岡というと何が有名ですか」と聞かれたらなんと答えるのだろうか
河井継之介、山本五十六、田中角栄、櫻井よしこ、星野知子などが話としては出てくるだろうか
後は三尺玉、米百俵、火炎土器、酒、米、水、浪花屋の柿の種、美術館、温泉、大学
歴史で切るか、食べ物で切るか、設備で切るか、 イベントで切るか
ん、旅行者に合った紹介をするためには、どんなことに興味があるかを聞くことから始まるのかもしれない
そんな研修をタクシー運転手にする必要があるのかな、などと思った
タクシーは地元の顔と感じた

そして、何よりここ水戸芸術館が館内案内ツアーをやりますと入り口で案内を出していることがよい
普段は見ることのできない場所まで案内をしてくれるというのは興味のあることだ
そういえば大洗の水族館も館内ツアーを実施していたことを思い出した
そして、館内のスタッフのジャンパーを着た人は必ずいらっしゃいませと声を掛けてくる
それに比べて、偕楽園の隣にあった「義烈館」なる展示館は悲惨な対応だ
館内には「撮影禁止」、「さわるな」と赤字でデカデカと書かれた注意書きばかりが目立つ
係員は寒いから部屋の中に閉じこもってこっちの様子をジロリと見定め
自分たちのおしゃべりに夢中になる

とにかく、まちの雰囲気を楽しんで、何か不似合いなランドマークだが
それなりに頑張ってまちの活性化に前向きに取り組んでいる姿が印象的であった
古い歴史を大切にしながらも新しいものに向かってゆこうという意気込みは感じられた
水戸の人口はどのくらいかと聞いたら20数万人だという、長岡とそんなに変わらない人口だ
ここは平野の真ん中で海にも近く、何か特徴をつかみにくいところだと感じたが
そのなかでも特徴を出そうと前向きな姿を見ることができ、うれしかった

今日何度目だろうか、水戸駅の工事中の階段を行き来するのは
特急の指定席券を握りしめてようやく水戸から離れ上野へと向かった

そして約1時間後には上野駅の雑踏の中にいた

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