平成19年07月25日(水曜)

朝日に反射している航空レーダーだ

目が覚めて部屋から出てみたら朝日がキレイだった

水道タンクの頭と東山に見える塔の間に低い雲が漂っている

朝日が信濃川を照らし出している

ここの建物の窓は汚れていて、それが写真に写り込んでしまう

我が分身なのだ

まだ静かなナースステーションだ

「おはようございます、朝食の用意ができました」というアナウンスが流れる

いままで恨めしく思っていたこのアナウンスも今日は心待ちにしていた

さて、最初の食事はどんなモノなのか期待を膨らます

しばらく待っていた

ちょうどドクターがやって来た

「今日から食事を開始しますね」と言う

「ハイ、それでさっきから待っているのです」

「重湯からですからネ」

「ハイ」

ドクターが帰った後もしばらく待つが食事がこない

不安になって、これは食堂に行かなければならないのかと思い始めた

そう思ってベットから起きあがろうとしたところに食事が運ばれてきた

ん、やっときた

トレーにフタ付きのご飯茶碗とみそ汁の椀、そして牛乳とジュースが付いていた

スプーンはもう朝から机の上で待機している

ふたを開けてみる

ご飯の方はとろりとしたスープのようである

みそ汁のふたを取る

ん、予想しなかった、忘れていたみそ汁の匂いが鼻から心地よく脳を刺激する

一気に食欲をそそる

そう、みそ汁の匂いに食欲をそそわれる

どちらから手を付けようかと思った

スープのご飯茶碗かみそ汁椀か

やはりご飯に行きたい

スプーンを使って一杯すくう

そっと口に持ってゆく

一口すすってみる

とろりとした中に少し甘みを感じる、美味しい

そう、これはそうそう、あのおかゆの上澄みだ

当たり前と言えば当たり前のことなのだが

改めて味覚を通して「重湯」という概念的な言葉と「味」という体感による実感がつながった

言葉だけで今まで説明を受けてきたが、やっと実感としてわかったことで本物になったような気がする

みそ汁を飲んでみる

味噌の香りがちょうど良い刺激で鼻から脳を刺激する

口に含んでみる

味が付いていて旨い

もちろん具など一切無いのだが十分美味しい

そしてまた重湯をスプーンですくってすする

先ほどのみそ汁の味が重湯の甘みというかうまみを引き出してくれる

美味しさとは相乗効果なのだと思った

量は思ったよりも多いと感じた

みそ汁も飲み干して、重湯もキレイにすくって食べた

さて、こんどは良ェ牛乳だ

200mlと書かれている

飲み始める

半分も行かないうちにいやになってきた

満腹感というか胃に入らない

途中休憩しながら

どうしたモノかと思いつつも

なんとか良ェ牛乳を飲み終えた

胃がいっぱいな感じがしている

もう一つある、ブドウジュースなのだが手が伸びない

125mlで61Kカロリーと書かれている

これを飲まないとエネルギーが足り無いのだろうかと心配した

ま、取っておいて後で飲もうと決め食事を終えた

最初の食事は思っていたよりも美味しく量も多かった

昼食となった

やはりベットに正座していただこうと思った

フタの中でタッパの上に「栄」とかかれていたか

「ん、さかえですか、良いですね」と話したら

食事を持ってきたおばさんが

「栄養課のエイですよ」と突き放すように言った

その瞬間この入れ物が陳腐なモノに見えてきた

入れ物の数が増えた

あさは「流動食」と指定されていたが、昼は「三分粥」と書かれていた

ご飯のふたを取る

朝とさほど変わらないようだ

みそ汁のふたも取ってみる

ワォー、喜びの声を上げた

なんとおすましで中にかき卵が入っているではないか

すごい、あさは何も入っていなかったのに昼は卵入りだ

そしてあんかけ豆腐も小鉢で一品追加、更にプリンもある

しかし、だいたいお椀の位置がバラバラだ

ん、例の、おもしろくない「栄」の字が無造作にマジックで書かれたフタを開けてみる

なにかスープのようだが入れ物の中が運搬時にあばれたようだ

スプーンをおかゆの中に入れてみる

お、お、ご飯粒が入っている

ご飯だ

とろりとした舌触り、口の中に広がる懐かしい子供の時のおかゆの感覚が脳を駆けめぐる

夕飯になった

さて、予定では5分粥になっているはずだ

トレーを見る

お、大きな入れ物がある

ふたを取ってみる

なんとアルミホイールで包んである

なんだろう、期待が高まる

ちょうどお見舞いの方がおいでで、その方も

どんな食事が出るのか興味津々だったようだ

私は後からゆっくりホイールを開いてじっくり味わおうと思っていたが

客人は「写真取りましょうよ」と催促する

そうだな、と思っている間に客人はふたを開け、ホイホイとアルミホイールも開けていった

「わ、すごいじゃない、魚、魚」

そう、見ると鮭の包み蒸し焼きなのだ

そして、もう一品は里芋の煮物

みそ汁にも具が少し入って十分な食事だ

朝食から見ると雲泥の差だ

明日の朝は7分粥だというからもう期待度が上がる

今日は引越なのだ

今まで10階耳鼻咽喉科のフロアーにおじゃましていたが

今日からは8階内科のフロアーに引越だ

大きなお花をいただいたりしたモノだから荷物が一杯になる

家内がコトコトと準備をしているので私が何もしないでベットに座っているだけでは気が引けて

少し手伝おうと思って手を伸ばしてモノを取ろうとしたら

点滴の管を付けたままベットから落ちかけて冷蔵庫に頭をぶつけてしまった

家内から余計なことをしないでいいからじっとしていろと命令がとぶ

なんとなく気が引けるが、やはり病人は病人らしくしているのがよろしいようだ

新しい部屋に移ってみる

前よりスッキリしている

前の部屋にあったような壁に絵の飾りなど無い

引越が終わった後

やはり疲れたのかベットで寝てしまった

引越の準備で忙しい

さて、引っ越し先は隣の棟ということで
現在建築中の映画館が見える

客人が持ってきてくれたキレイなプラント

ちょうど日に当たって輝いていた

空を見ると高い雲が見える

映画館が西日を浴びて光っていた

向かいのモール屋上も西日の中で光っていた

キレイな光りと雲だ

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