病院に入って寝てばかりいる
というより寝ている以外しょうがない
それも痛くてしょうがないのだが
看護婦、いや看護師が入れ替わり立ち替わりやってくる
私が担当になりました、と言われてもハイハイで
こっちは名前を覚える気力もない
夕方になると、夜の担当ですと違う人がやってくる
朝になると、今日の担当ですとまた違う
とにかく人の出入りがある
というより、この人の出入りがなかったら
私は絶望的になっていただろう
誰かがきてくれて変化が気を紛らわせてくれる
夜中に痛いと言うとしっかりと私の記録に書かれているようだ
後からきた人が、夜中にいたかったようですねと言う
その後に担当になった人も
胸のあたりも痛いようですねと聞いてくる
あまり看護師にバカなことを言うと
すべてきろくに書かれてナースステーションのなかでは
情報が完全に共有されているようだ
いろいろ書類にサインさせられる
入院計画書だという
いろいろ書かれているが
入院予定期間の欄は不詳と書かれている
朝は明るくなれば目が覚める
というより寝ているのがいやになる
少しは動こうと思って歩いてみる
歩くことで気が紛れるかと思う
ナースステーションから鋭い目線がとんでくる
私が点滴をぶら下げて歩き回っていると
ナースステーションの前を通るときに
何とも言えない沈黙が流れる
明るい談話室がある
窓ガラスが汚れているのが目に付く
そう、こういう汚れは気になるのだ
窓から見下ろすとヘリポートが見える
こんなヘリポートがあるなんて思わなかった
駐車場から見ているとこれは何の建物かと思っていたが
上から見るとヘリポートだとわかった
回りを見渡してみる
案内表示があるが、脇に鳥の絵が描いてあるのが目に付いた
他の表示を見たらこちらはトンボだ
よく見ると各部屋の表示もすべて何かの絵が描いてある
子供でもわかるようにと言う配慮だろうか
なかなかよく考えられているように思える
鎮痛剤を使うとウソのように痛みが感じられなくなる
ホントあんなに痛いと思っていたモノが無くなる
そうすると元気が出てくる
若い看護師がやってくる
ビヨウイをとりかえますか、と聞く
ビョウイ「病衣」とは何かと聞くと寝巻きのことだと答える
その彼女が「採血しますね」とやってくる
「じゃ、刺しますね」
「痛いですよ」と言う
痛いですよと言われると痛いような気がしてくる
大丈夫ですよと言われれば大丈夫なような気がしてくる
普通痛いですよと言いながら注射器を刺す人はいないと思うが
ま、素直な若い看護師なのだ
その彼女があちこちさすってみるが苦労しているようだ
私は昨日のベテラン看護師が言っていたことを思い出した
「なんでも看護婦泣かせの血管だそうだよ」と
彼女が言う
「そうですね、
ちょっと待っててくださいね」といなくなる
どうも自信が無くて他のベテランを呼びに言ったようだ
彼女が帰ってきて思い切ったように何か言う
何か言うのだがまったく意味が通じない
何のことかと質問すれば
手首の甲のことだという
どうもベテランに言われて覚悟を決めて戻ってきたようだ
その彼女が数回トライしてみたが
ダメだと言いながらズブズブとやっていた
ようやく少し先輩らしい若い子がやって来た
先輩にバトンタッチする
先輩も苦労していたようだが
何とか一回で成功した
先輩の面目躍進だ
ま、こっちは何も言えないですから、ハイ
どうぞお好きなようにやって下さいだ、ハイ