平成17年11月16日(水曜日)その2

「高久料理活用」という本をご存じだろうか

江戸時代の後期(1831年)に長岡の料理屋が出版した長岡料理の本なのだ
そして、なんとそれは私の祖先、高野久太郎が書いたモノだ
高野久太郎は屋号を高久(たかきゅう)と言い
高久の8代目主人
ちなみに私は15代目にあたる

その本が長岡の図書館に一冊だけ現存しており
それを元にして1997年に当時北越銀行の役員から長陵社の社長になられた田中一郎さんが
新潟日報事業社から出版された本が、「料理活用」

その本に書かれた料理のレシピに基づいて復元してみようと言う試みが
何年か前に青善という長岡の料理屋さんでおこなわれ
そのときはテレビ局も入って後日テレビ放映もされた

そして、今回、やはりこの高久料理本を古文書として読み解きながら
勉強しようと言うことで
長岡市民大学の講座として開設された
高久料理本を読むということで、内の家内が、これは私が行かなければ、私のための講座だと意気込んで
この講座を受けていた
指導は長岡大学助教授の小川幸代先生だ
そして、最終回には実際にそれを食べてみようと言うことで
青善さんにお願いして実現することになった

そこで、私もその最終回に、はい、食べるときにだけ参加させてもらい
それに参加してきた


献立表だ
高久料理本には春夏秋冬の料理が各々3種類ずつ掲載され、さらに長期投宿者用のメニューも記載されている
今回はとにかく高久料理本に書いてあるとおりの料理を青善の料理人さんに作ってもらった

そして、素材についていろいろ説明を頂いた
みな、地元の素材で、味噌はなんとあの「美味しんぼう」(16巻)のマンガにも掲載された長岡の摂田屋の味噌
星六味噌とかいうようだ
それを使っているという

さらにお酒は江戸時代にちなんで吉乃川の濁り酒、これが実に美味しいのだ
ちょっと飲み過ぎてしまうぐらいにおいしいのだ

さてさて、料理の説明になるのだが、ちょっと時間が無くなってきたので、後でまた続きを書こうと思う、しばらくお待ち願いたい
それまで写真を見ながら想像してみて欲しい
とにかく珍しくもあり、かつ、美味しいのだ
本当だ

まずは、お刺身料理だ

本膳鱠(なます)の部、冬の料理だ
真鱈紙塩切重(まだらかみじおきりかさね)
玉子そぼろ
椎茸せん土佐煮
梨子(なし)おろし
にんじん角打

これが一つの器に盛られている
最初の真鱈紙塩切重
これはお刺身だ
料理方法が紙塩ということで
真鱈に塩味を付けるために美濃紙に包んで薄く塩をふって
全体に塩味が行き渡るようにした料理だという
食べてみた、さほどの塩味はしなかったがみずみずしく柔らかい
そう、ふくよかな舌触りでふくらみのある味わいだ
それに玉子そぼろがかかり
それを梅酢だろうか、それで食べて欲しいという
わさびを付けて食べるとさらに美味しいですよと
私のとなりにおいでの小川先生が説明してくれた
同じ器に椎茸の土佐煮、これも柔らかく味も落ち着いており
なるほどと思いながら食べた

梨の「おろし」 がついていたが
ナシをおろして添えてあるもので
そんなに強い味があるわけではない

全体に味は薄味で上品にまとめられていた

ちなみに、にんじん角打ちというと8ミリ角に切ったものを言うそうだ

次は本膳汁の部の冬の料理

赤七白三仕立
かれひ かき身
ささがし牛房(ごぼう)
雪のり

赤みそ七に白みそ三の割合で作ったみそ汁ということだろうか
カレイとゴボウ、雪のりなるものが入った物と説明がある
味噌は長岡の摂田屋(せったや)にある星六味噌だそうだ

平という分類がなされたもので冬の料理として


せり
丸椎茸

この鴨肉が美味しい
なんでも越後は鴨が多く捕れた
そう、信濃川の流域には沼や池、干潟などがたくさんあり
鴨が豊富だったので鴨料理が盛んだったという
鴨と言えば越後の名産だと田中先生の本に書かれている

この日は地元の芸者さんもおいで頂いて
久しぶりに「長岡城の唄」と踊りを見せてもらった
昔、長岡祭りの時に陣羽織と刀を持ったお姉さん方が
大手通の真ん中で踊っていたのを見ていた
最近あまり見た記憶がなかったが
久しぶりに見せてもらった
「とりでのかがりび・・・むねん、やむなし継之助」などと

いはやは、この濁り酒は美味しいのですよ、ほんと

そう、昔、長岡の牧野殿様が三河からこちら長岡に来るときに
一緒についてきた町人の内、魚屋が二軒だけあって、その一軒がこの「青善」さんだと聞いている
そう、そしてもう一軒が高久(たかきゅう)だ

さてさて、次は焼き物

鮭 塩焼き またたび

この鮭はサーモン(輸入物)ではなく柏崎産の鮭だそうだ
そう、味は私が小さいときに食べた鮭の味そのものだ

マタタビは入広瀬産のものだという

蒸し物
はも焼身
萌豆(もやしまめ)

「はも」と言っても、これはヤツメウナギのことで
江戸時代には信濃川の大小の河川にはヤツメウナギが遡上して
越後はヤツメウナギの全国に名だたる名産地だったという
今回は寺泊産のヤツメウナギだという

菊めし
そう、菊めし、食用菊の入ったご飯だ
なんとなく優雅な雰囲気にさせてくれる
この菊は「かきのもと」で、長岡の悠久町の近く、私の祖母の実家に当たる
千代栄町の菊だという

香の物
あんにご

これだけだとしょっぱいだけだ
ご飯と混ぜてみたり
そう、最後にはご飯を食べた器にお湯を入れてくれて
そのお湯の中に入れて食べるとちょうど良いくらいになる
「あんにんご」と今では呼んでいるもので今回は入広瀬産だという

梨のからし和え
ま、フルーツというところでしょうか
からし和えといっても
これはそんなに芥子がきいている状況ではありませんでした

今回の企画は市民大学講座の一環で
基本的には古文書を読もうというもので
その題材に高久料理本を持ってきたもので
その古文書を読み解く先生が私の隣の着物姿の素敵な先生なのだ
小川先生とおっしゃる素敵な先生で
いろいろなお話を聞かせてもらった

今回の料理は、主に高久料理本の四季の料理の内
冬の料理に掲載されている三つの内の一つを再現している

このほかに、高久料理本に出てくるメインディッシュとして

春 カレイ、タイ、サバ
夏 コチ、アワビ、アユ
秋 カツオ、スズキ、キス
冬 イナダ、サワラ、マダラ

こんな魚介類が出てくる

なかでも日本海の春のサバは、季節の味覚を代表するもので、とにかく美味しいという
「越後の食い倒れ」の裏付けとして、美味しさの代表にこのサバが上げられるという
なんでも「五月サバ嫁に食わせるな」という言葉があるそうだ

そうなると急に食べたくなってくる
日本海の春サバをこんどは料理してもらいたい物だと思った

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