平成17年8月5日(金曜日)
いやはや、ここは合宿所のイメージだ
何もない、タオル、歯ブラシ、浴衣、何もない、そう、そう言えば民宿ってこうだったと思い出していた
トイレは共同、そう男女共同
洗面所も共同、合宿所を思い出す
風呂も共同、もちろん男女区別など無い
普通の家庭の延長線だ
いわば間借りというイメージだろうか
夜、風呂は8時で終了だという
夜、9時になると島内全戸に聞こえるスピーカーで
「火の元に気をつけてお休み下さい」と電信柱にでも設置されているのだろうか
島内放送が流れる
外に出ても何もない、真っ暗だ、そこで部屋で酒を飲む
自然の静かさを肴に酒を飲む
と言っても今日は焼酎だったが
飲みながら話をして、「おい、まだ10時だぜ、普段は今頃夕飯している時もあるぜ」などと話す
いよいよ酒が無くなる、「おい、やっと11時だ、寝ようか」と布団に潜り込む
部屋は障子戸だけだから実に朝日が良く当たる
この部屋は、この民宿の中では一番良い部屋のようだが日よけのカーテンなど無い
あるとすれば雨戸なのだろうが、そんなもの気にしないで寝たら
しっかりと6時にはまぶしくて目が覚めた
料金表が廊下に張ってあった
組合協定価格と言うことだろうか
このような組合価格をそう言えば税理士会も昔は決めていた
いつのことだったろうか、もうそんな組合価格などと言うものが成立しなくなったのは
サービスを提供する側に決定権があり、サービスを提供する側が決めたことで全て通っていた時代と
サービスを購入する側に決定権があり、サービスを購入する側が求めたことで全て決まる時代の違いを感じた
サービスを提供する側が絶対的に少ないところでは提供側に主導権があるが
サービスを提供する側が多数になると、購入側に主導権が移る
この粟島という地にお客が来たら、お客の側には選択権が無くなってしまう
ある話を聞いた
ここに何回も足を運ぶ用事のあった人が、毎回宿を替えて宿泊していたら
ある時クレームが付いたという
それは最初に泊まった宿があなたの宿で、むやみやたらに他の宿に泊まってもらっては困るという
お客様は「最初の宿の客」であって、「他の宿の客」ではないから、勝手に他の宿に泊まると
最初の宿からお客を取ったとして他の宿にクレームが付くという
だから宿を替えないで欲しいという
こんな話は、そう、税理士会でも昔聞いたことがある
税理士の顧客が他の税理士に替わったら
最初の税理士から、「ウチのお客を取った」と
お客様はお店の「モノ」になってしまっている
しかし、そんなことをやっていると
お客様が嫌気をさして粟島そのものに行かなくなってしまう
粟島そのものがもっと魅力的になるためには
快適な宿泊設備と魅力的なサービスの提供が今以上に工夫されないと
粟島に対する魅力は低下してゆくことになるかもしれない
粟島の生活を少し体験し始めたら
実に素朴で、自然のリズムの中でゆったりと生活が進んでいると感じた
そんな中で、テレビをつければ
大都会東京の魅惑的な情報がドンドンと流されてくる
こんな状況では若い人は大都会東京にあこがれてしまう
今朝は、特別料理をお願いしていた
粟島名物のワッパ煮だ
ワッパという木の皮で作った入れ物に
味噌汁と魚の入ったワッパの中に焼いた石を入れて煮込む料理だ
今日は食卓だから
石を入れた直後に座敷に運んできてくれた
汁が煮えたぎって沸騰している
汁の味は濃いめの味噌味だ
夕飯は6時から8時、朝食は7時から8時
この民宿は家族総出でお手伝いしている
奥さんが全てを仕切っているようだ
長男の中学生だろうか、お兄ちゃんがよく手伝いをしているようだ
夕食の片づけはお父さんが手伝っていたようだ
玄関先に蝉の抜け殻が飾られていた
食後の散歩に出かけてみた
三輪車がこの島では有効な車両のようだ
目の前には船が何そうも浜に引き上げられていた
今日も暑い日差しだ、きらきらとまぶしい
カモメだろうか、船のマストに止まっていた
昨日乗ってきた高速艇が出発準備をしている、8時の出発だ
この島専用の火力発電所のようだ
氷の旗が風に揺らいでいる
強い日差しに追い立てられるようにこの旗の店に、いや店と言って良いのか、とにかくこの店に入ってみた
店の中を見ると鉄工所のようだ
鉄工所兼用のかき氷店だという
日差しにさらされていたテーブルを日陰まで追いやって場所を作ってくれた
先がスプーン上のストローが刺さってミルクあずきアイスが出てきた
暑さの中でおいしかった
店主といろいろな話をした
我々の疑問は、というより昨夜の夜の飲み会で話題になった話は
たぶんこの島には歯医者がいないだろうと言うことと
床屋は目に付かなかったが必ずあるはずだと言うことだ
この質問をしたら、床屋は2軒あるという
歯医者は毎週週末に歯医者さんが来てくれるという
そして、緊急の患者が出た場合は役場から無線で
ヘリコプターの出動要請すれば15分で村上の病院に連れて行ってくれる
場合によっては医師がヘリに乗って来てくれたり
村上の病院と遠隔診療ができるようになっているという
さらに船をチャーターすると8万円掛かるそうだ
それで村上の病院まで行くという
但し、この8万円は保険が利いてあとで半額戻ってくるとか
そうそう、この島では警察官の常駐はなくて夏場だけ1ヶ月島に来るそうだ
その期間だけは飲酒運転をしないように気をつけるとか
さらに、昔は島の車は車検切れの車が多かったようだが
最近は、島の車でも同じ日本国なのだからキチンと車検を受けるように
ということで、いまでは皆車検をキチンと受けているとか
そんな話をしているウチに、島の観光で自転車はどうかと聞いたら
坂があるからきついという、それなら民宿の人に頼んで車を貸してもらえばいい
などと話が出たところで
9時の観光船に乗ろうと思っていると言ったら
もう9時だから船が出るよという
船は暑いのではと聞いたら
そんなことはない、クーラーもついているしと
それならばよし乗ろうということで
目の前の観光船用船着き場に向かった
船は魚船だ
結局、後部甲板で風に当たっていた
海はベタなぎだ
水平線上にみえる釣り船
島をめぐり始めた
島の最南端だ、ここまでは岩場が少なかったが、だんだん増えてきた
外海に出たら海の色が変わって波も少し出てきた
島の岩場の形がおもしろい
外海側の村に入ってきた、ここは100戸ほどの集落だという
全くの漁村だ
岸壁に観光船乗り場と書かれた船着き場
海水浴客だろうか、若干名の乗り降りがある
岸壁の近くを見ると魚が群をなして泳いでいる
船の上には万国旗がたなびいていた
この観光船は島を一周する、およそ1時間
外海側はやはり冬の荒波で岩が削られて
穴があいたりしている
船は岩場と岩場の間をすり抜けるように進んでゆく
何かスピーカーからがなり立てるように声がするのだが
スピーカーのワット数が低いのか、テープの声が割れて良く聞こえない
競争相手のない独占企業だから改善などなされないでも何ら問題ない
聞こえようが聞こえまいがどちらでもいい、と言うことなのだろうか
島の北端はなだらかな土地があるようだ
なんでも昔ここに野生の馬が育っていたという、いまでは居なくなっているという
岩に鳥がとまっている
船室内はクーラーが利いている
港に船が戻ってきた、近くになにやら飾り物があった、七夕の短冊がぶら下げられている
「おみやげ」という店をのぞいてみる
銘菓「粟島へ行きタイ」と、「続・粟島へ行きタイ」が置いてあった
これは我々の泊まった民宿のお茶請けに出されていたモノだ
これが粟島のちょっと贅沢なかき氷やさんだ
船の前で待っていたら急に我々と船のタラップの狭い間に車が割り込んできた
何なんだ、何を無理矢理車がつっこんでくるのかと思ってみていたら
郵便物を積んだ車だった
毎日同じ位置に同じように同じ人が車を止めて郵便物を運んでいるから
観光客が居ようが、とにかく同じ場所に止めないと気が済まないのだろう
そして、その郵便物をいつものようにと言うことなのだろう、荷物を運ぶ船員さん
船に入ると最初に張ってある掲示
ま、滞在時間は短かったが、異文化に触れた感じがした
異文化というと大げさだが
我々の中に記憶として残っている昔の姿がそのままあった
とにかく時間の進むのがゆっくりで
体が自然のリズムを取り戻してゆくような気持ちがした
この島では金本位制ではなく、米とか魚本位制というと怒られるだろうか
とにかく金銭収入は貴重なもので、観光客が落としてゆく資金は貴重な財源
だとしたら、この粟島自体、もっと魅力的な滞在しやすい設備やサービスを
用意できたらリピート客が増えるのにと思った
なにか素材だけで勝負して、その素材を活かした応用やサービス
付加価値を増やしてPRをもっとすることが大切ではないかと思った
ちょっとまてよ、これってひょっとしたら長岡花火と同じことではないか
長岡花火も単に大きいだけで、もうちょっと応用なりサービスなり
付加価値を増やしてPRすることが大切と言うことではないか
ま、そんなわけで私が初めて体験した粟島訪問を終えて帰ってきた
そういえば宿の女将が、今度来るときは5月20日過ぎが良いですよ
そうすれば鯛料理もおいしいですよと聞かせてくれた
今の時期はおいしいものを食べるには最悪の時のようだった
お昼に村上に戻った
お昼に村上牛のおいしいモノを食べようということで
ある店を予約した
店主がちょうど良い肉がありますよという
炭焼きにして食べるのが一番だと直接焼いてくれた
確かにおいしい肉を食べさせてもらった
さらに地場のお米、岩船米のコシヒカリがおいしいですよと炊きたてのご飯を出してくれた
食後、店内を見せてくれた
二階の座敷はまるで明治天皇の御前会議のような雰囲気だった
窓ガラスもなかなかの磨りガラスが入っていた
昼食を終えて、せっかくだからと堆朱(ついしゅ)を見て行くことにした
無事、粟島、村上の旅を終えて帰路に就いた
高速道路の出口で前の車がETCに対応していなかったのか立ち往生していた