その夜は冷え込んだ。石油ストーブで暖を取った。揺れの合間に毛布を取りに家にも入った。ストーブを囲みながら聞いているラジオからは、まったく山古志の情報が流れてこない。流れてくるのは、広範囲で電気やガスや電話や携帯が使えなくなっていること、そして新幹線が脱線したことだった。その繰り返しだった。同じ情報しか流れてこないラジオをみんなで何時間も聞いた。
その間も何度も揺れた。そのたびに我が家の裏山から岩が落ちる音が響いていた。裏山には鉄骨の雪崩止めがある。その鉄骨に崩れてきた岩があたり鈍い音を響かせていたのだ。小さな揺れがくるたびに岩が落ちて音がする。そのうちバキバキ、メリメリと裏山の上の方からスゴイ音が響いてきた。「山が崩れるぞ、逃げろ」と誰かが言った。少し走った。と同時にガッシャーンという音が夜の闇に響いた。大きな岩や木が崩れ落ちてきたことがわかった。目には見えず近づくこともできないこの『音』が、本当に本当に不気味だった。夜はだいぶ冷え込んでいた。空には星がキレイに瞬いていた。
「
我が家の裏山にある雪止め(なだれ防止柵)。崩れ落ちた木や岩がたくさんのっている。あの地震から翌日を迎えるまでの月夜の中、余震のたびにぶきみな音を立てて裏山がちょっとずつ崩れていた。あの夜は本当に怖かった。」(11月23日撮影)