「地震の記憶が消えないうちに」

10月23日(土) その3

 揺れの合間にすぐ近所のお兄ちゃんが家から出てきて私たちのそばに来てくれた。そしてすぐ先にあるガソリンスタンドのお姉ちゃんは「そっちは大丈夫なの?」と大声で叫びながら私たちの安否を確認してくれた。

   すると上のほうからゴォーと水が流れてくるような音がし始めた。普段はゆっくりと流れている家の前の川も激しく水が流れる音がする。この音が更なる恐怖心を駆り立てた。母と二人で「この音は水だよね。水道管や山の野池が崩れたのかもしれない」と言っていると、私たちが立っている道路に川を溢れ出した泥水らしきものが流れてきた。その流れに足元をすくわれないように必死で踏ん張った。

しばらくすると、その泥水の流れがおさまった。私たちはガソリンスタンドのお姉ちゃんのところに行ってみることにした。一人でも人数が多い方が心強く思えたからだ。ちょうどガソリンを入れに来ていたお客さんも数人いた。お客さんの一人が「電信柱が倒れてきて電線に触れると大変なことになるから、電線から目を離さないようにしなさい」と教えてくれた。

そしてガソリンスタンドに来ていたお客さんの中に、小学生らしき二人の子供がいた。その二人がひどく怯えていた。「怖いよー、怖いよー」と泣きながらお父さんにしがみついていた。その時だ!また激しい揺れがきた。とにかく激しい揺れが何度もなのか、それとも一回が長いのかがよくわからない。その子供たちに「みんながいるから大丈夫だよ」と言いながら、そして自分にも言い聞かせながら、私もその家族の輪にしがみつきながら揺れがおさまるのを待った。

これは「やすよ」君の家の前にある川がせき止められてた場所(11月23日撮影)

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