まるで初夏のようだ

冷夏といわれた夏の終わりに

2003年8月28日 柏報掲載

高野 裕

 

昨日、昼食時間がずれ込んでしまい
ニューオータニのコープビル1Fダイエー側のカフェで
遅い昼食を一人で食べていた
「五十六カレー」とコーヒーを注文して
全面ガラス張りの通りが見えるテーブルに腰掛けた
お客はだれもいない

ガラス越しに見える駅前ロータリーの上空はまるで初夏のようだ
抜けるような青空と白い雲、キラキラと輝くような明るい日差し
道行くサラリーマンはカバンを日除け帽の代わりに頭にかざし
ご婦人は白いパラソルを差しながらハンケチ片手に歩いてゆく
なにか夏目漱石の小説にでてきそうな風情だ

ことしは今頃初夏がやってきたようだ
ふと、通りを見ると
見慣れたバンダナを頭に巻いて自転車をゆらゆらとこいで行く男が
目の前を通ってゆく
アッとおもって声をかけようとしたがそこはガラス越し
聞こえるはずもなく、どうしようかと思っているうちに
その男は視界から消えていった

あれは米八のダンナだ
今頃なぜ駅の反対側をフラフラしているのだろうか
いやいや、よけいな詮索はよそう
そう思い直してコーヒーカップに手をやった

 戻る