「タイムトリップ」

高野 裕

2003年2月23日 柏報掲載

大学時代のサークルが40周年記念パーティとのことで
横浜に行ってきた
久しぶりに大学の仲間と会うので少し早めに石川町の駅で待ち合わせて
会おうと言うことになっていた
30分ほど早めに待ち合わせ場所に着いた

仲間の顔を探すが見あたらなかった
ふと思った
その時探していた顔は
姿形が30代の人を追っかけていた
おかしい
30代の訳がない
仲間は当然50歳前後の顔である
そう思い直して探すが50前後の姿というと
えらいおじん、おばんである
おかしい
50前後の姿など想像がつかない
せいぜい30代の顔しか浮かばない

しばらくして仲間が集まってきた
開口一番、お互いに顔を見合わせて「エー」と絶句
女性陣はしっかり「おばさん」である
髪は白くなって体形は崩れて、肌の張りはなくなって

しかし、ちょっと話し始めると目に映っている姿は
あのはつらつとしていた20代の若々しい映像が流れ始める
あのときほら、あそこでほら、そうそう、そうだよなーーー
テニスボールのように会話がポンポンと弾み始める
まるでコートに立ってラリーが続いているように
あまりはしゃぎすぎて通行人の他の人に
迷惑がかからなければ良いが、などと思いながら
どんどんと話題が進んで行く

もし私が、その時、単なる通行人として脇を通ったらその集団は
体形の崩れたカサカサの肌で、髪はグレーのおばさんと
太った頭髪の薄くなった、肌にはシミのめだつおじさんが
まったりとしたテンションで息切れしながらゆったりと話しているとしか見えない
間違っても若者がはしゃいでいるような状況なんて想像できない
まったく静かな集団である

もちろん、当事者の目には20代の若々しい
肌もつやつやして輝いているお互いの姿が目に映っているのにである

昔の仲間は幾つになっても若いときのままで自分たちの心に焼き付いている
そんな世界にタイムトリップして来ました

2003年2月23日 柏報掲載

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