件名: 私の太陽   2001/4/28


昨夜、「私の太陽」というタイトルのドキュメンタリー番組を見た
フジテレビの番組のようである
話は中国から32歳で日本に留学して17年目で博士号を取得して
中国に帰って大学の教授になった日本での悪戦苦闘の話
1996年から1998年、44歳の旦那と妻、子供は中学生の女の子

奥さんと2歳の子供を連れて日本にやってきて
奥さんが皿洗いの仕事をしながら旦那は勉強一筋
そして奥さんがコツコツとためた400万円を
奥さんに内緒で全額投資に回して
結局詐欺事件に巻き込まれお金を失い
奥さんに追い出され別居させられる
博士号をとって祖国中国に帰り学校を造るにしてもお金が必要だ
そのためにはお金を増やさねばと思い投資したという
奥さんに黙って・・・、彼は言う、投資を半分にすれば良かったと・・・

家賃2万の三畳一間、今まで勉強一筋だった旦那は
アルバイトをしながら月6万円の収入で勉強を続ける
食事は毎日パンとインスタントラーメン
栄養をつけようと蒲焼きの缶詰を一つ、安い方を思い切って買い
こんな贅沢はない、うまい、といいながらパンをかじる
子供とクリスマスに一緒に食事をすることになった
彼は貯金の全額、1万円を引き出して子供に会いに新宿に行く
子供がねだったプレゼントはキャラクターモノの鉛筆と消しゴムだけ
そして中華料理店で焼きそばを食べた

年末に家族で一緒にすごそうとようやくお声が掛かって
久しぶりの我が家に返る
子供がとても喜んでウキウキしている
旦那は食事の後、なんとイタリア民謡、オーソレミーヨを歌い出す
本格的な歌だ、歌詞が流れる、あなたは私の太陽よ、と
奥さんはただひたすら旦那のためにアルバイトをしながら
子供と旦那の生活費を稼ぎ出してきた
それもみんな旦那の夢のため、博士号をとって祖国に帰る
後一歩で博士号取得を目の前にしている
家族で頑張って旦那の夢のため応援する

旦那の論文ができあがった
家族で提出用17部のコピーと製本を手伝った
提出が終わり家族そろってお祝いの夕食
「乾杯しよう」と子供が言う ウキウキして言う
論文が製本されてきた
家族でながめる
お父さんは立派だ、お父さんの初めての本だ、お父さんの夢が形になった
家族中でお祝いする

論文審査の結果がでた
千葉大学大学院の経済学博士号審査結果は不可
落ち込んでしまう
奥さんは不景気でアルバイト先から解雇される
旦那もクビになる
旦那の最後の給料で買えるだけの食料を買い込む

奥さんへのインタビューが入る
私たちはいま日本にいる中国人の中で一番貧乏かもしれない
だけど、自分は幸せだ
自分が一番幸せだったのは新婚旅行の1週間かもしれない
自分の青春はほんの一回のまばたきの間に終わってしまったようだ
そしてエンディングへと続いてゆく
バックに旦那のオーソレミーヨという歌声を流しながら
あなたは私の太陽よと歌詞が流れながら

もう、涙を流しながら釘付けになってしまった
私と同じ時期に大学院で同じようなことをしていた
私の仲間にも中国の人がいる、大学院での中国の仲間を思いだした
論文提出の時のことなど思い出していた
子供に日本語を教えてもらっている姿
文化大革命で勉強させてもらえなかったこと
大学受験しても成績優秀でも、あなたは資本家の生まれだから無理といわれ
日本に来る決意をしたこと
日本にいて祖国のことを、国のことを本当に真剣に考える、そんな姿
夫婦のこと、子供のこと、貧乏のこと、大学院のこと
わかる、わかる、んんーーーわかる

番組は終わったと思ったら、その後の彼のことがおまけとして続いて流される
2年後、博士課程6年目のラストチャンス
千葉大学の経済学博士第1号がようやく認められた
そして、ようやく母国中国に帰り今年、北京の大学助教授に採用され
教壇に立つことになったと報告される
49歳という
私と同じ年だ、夢を追い続けてくじけずに初心貫徹、やり遂げた
すごい、奥さんが一番よろこんだろう、私の太陽だ
ナレーションが続く
貧しい食生活のため歯が16本抜けた
ほとんどは差し歯だという


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