「合格したい人へ」

Takano Management Consultant and Co.Ltd.

9/28横浜国立大学広報YNU 148号

YOKOHAMA NATIONAL UNIVERSITY

大学院国際経済法学研究科2年

   税理士、中小企業診断士 高野 裕

平成8年秋季号掲載

「合格したい人へ」

 いま44歳、私は大学時代から30代にかけて幾つかの国家試験を受けてきました。その経験から私の合格体験をまとめてみたいと思います。

 @試験は実務とは違う。実務知識があると受からない。試験には試験用の知識が必要で、実務の知識は不要です。

 A科目の全体像が早い時期に見えていないと効率が悪い。一枚の紙に項目の相関関係をまとめた「体系図」を作成。これは鳥瞰図としての役割を果たします。「体系図」が作れるまで基本書を読みこなす。

 Bキーワードはカードに記入。私は「京大式カード」を使用。とにかくカード作りをする。カードがたまったら、グルーピングする。このとき「体系図」が役立つ。勉強不足な項目が見える。不足している項目を埋めていく。全体をまんべんなく押さえる。

 C試験の三ヶ月前、過去の問題重視で数をこなす。一ヶ月前、今までたまったカードを見直す。カードのタイトルを見て内容をメモ紙に書く。一週間前、どうしても間違うカードを抽出、内容が書けるように再度繰り返す。三日前、それでも間違うカードを書けるようにする。一日前、全カードを見直す。当日、間違いやすいカードだけを持って会場に乗り込む。直前、もう一度カードをめくって本番突入。

 D試験勉強は余計なことを考えない。とにかくそれに没頭する。計画を立てて、それを着実にこなしてゆく。

 E通信教育はダメ。受験専門学校に通学して基礎から勉強する。模擬試験を受ける。自分の力を見極める。模試結果は悪くても、まだチャンスはあると自分に言い聞かせる。余計なことは考えず計画を確実にこなす。

 F試験直前の一週間は不安になる。しかし、新しいことには手をつけない。今までやったことだけを確実に、ものにする。

 G合格とは自分に勝つこと。不合格は「自分に負けた」ためと悟る。言訳しない。試験にだけ集中する。遊びに気が取られ、新婚当時新妻に気が取られ、受験慣れで自分のおごりに気が取られた時試験に失敗する。自分に勝てれば合格する。頭の良し悪しなんか関係ない、「自分に勝てた人間」だけが合格する。

「天使と悪魔・・・」

 人の中には「天使」と「悪魔」が常にいます。悪魔のささやきは、とても甘く切なく「魅惑的」なもの。そのうえ人はそもそも弱いものです。いけない、いけないと解っていても悪魔の魅力にとりつかれてしまいます。

 人の中には天使も同居しています。悪魔のささやきの反対側で「そんなことしてはダメ」と確実に本人に聞こえる声でささやいています。だけれど、天使のささやく道はイバラの道で、つらい長い坂道に見えてしまいます。それに比べ、悪魔のささやく下り坂楽は、楽そうで魅惑的な道です。天使のささやきが聞こえていますのに、結局楽そうな道を選んでしまいます。これが後で敗因とわかるわけですけど、結局「自分に負けた」と言うことになってしまいます。

 自分に負けないためには、自分の逃げ道をふさぎ「自分を追い込む」ことが必要です。その一手段として勉強計画を立てることを、おすすめします。自分で自分を逃げられないように追い込んでゆくために勉強計画を立てるのですけど、あまりに「追い込みすぎる」とまた挫折してしまいますから余裕を持たせた計画がよいでしょう。結局、最大の敵は自分ということに早く気づくことが一番です。

「合格してから」

 試験に合格するということは、いわば「専門」の小学校に入学したようなものです。合格が最終点ではなく本当の出発点でしかないと理解してください。山頂上にやっと立って見渡したら、その向こうにもっと高い山々が見えるだけです。

 人より一歩でも前に出ようとしたら、必ず何かを犠牲にしなければ得られないと私は感じました。すべて円満にしようとすると結局なにも得られないことになります。得るものが大きいほど犠牲も大きいことは認識しておかねばならないと思います。

「なぜ、大学院生か」

 私という船が社会という遠洋航海に20年ほど前に出航しました。その航海中に物事の本質はどうあれ小手先の手法を覚えて経済利益を得ることができるようになってきました。いわば、船底にビッシリと付着した貝みたいなものです。そこで、船がドッグに入るように私も当大学の大学院に入学したわけです。ここの大学院「ドッグ」で、もう一度学問的にたたき直してシェイプアップし、次の遠洋航海が前より素晴らしいものになるよう現在磨き上げしています。

「恋人がほしい」

 いま、あなたに恋人がいないなら恋人を作る極意を教えます。いまのままでいくら恋人がいないと嘆いても始まりません。いまのレベルにはあなたの目にかなう相手はいくら探してもいないはずです。素晴らしい恋人との出会いは、あなた自身を磨くことです。資格を取るために勉強すれば同じ目的を持ったいままでとは違うレベルの異性とあえるはずです。資格を取るために燃えているあなたは、異性から見れば輝いて見えるはずです。資格が取れればもっとステップアップした異性と出会うことができます。素晴らしい恋人との出会いは、まず自分を磨くことです。ただし、合格前に恋人に出会うと資格は取れませんのでご注意を!

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Last Updated: 11/22/96