「ジュリアナ東京 イン 長岡」

高野 裕


 東京芝浦に今話題のスポットがある。見た目は単なる立体駐車場に見える建物の地下にそれはある。若い男女がいつもと違う目立つファッションでギンギンのミュージックにノリまくり踊り狂う。若い女性はお立ち台に立って超ミニで目立ちたがる。ストロボがバシバシとたかれ、色とりどりのスポットライトが会場を走り回る。若者のエキサイティングなスポット、ジュリアナ東京だ。

 毎年8月1日から3日まで長岡祭りが開催される。メインは2日3日の3尺玉を中心とした大花火大会だ。しかし、私がおすすめのエキサイティングスポットがある。長岡祭8月1日のみこし担ぎがそれだ。長岡の広いメインストリート大手通りで夜、数十基のみこしが担ぎ出される。まるで、ジュリアナ東京という雰囲気をかもし出す。

 みこしは重い、しかし、なぜかしら魅力がある。神様の魂をみこしにいれて皆でかつぎ上げる。どういうわけか興奮の渦の中にはまってしまう。ふだんと違う。まず衣装が違う。パッチにドンブリ、サラシを腹に巻いてジカタビかセッタを履き、手ぬぐいを細くねじったハチマキ姿、タバコ入れにちょうど良い小袋を腰からぶら下げ、まるで大工の頭領もどきの長めのハンテンに手を通し角帯をカチッと絞め、わき腹を平手でパンと一叩きして気合いをいれれば出来上がり。もうこれで気分がワクワクしてくる。絞め込み姿、要するにフンドシなどから仕上げたならまさに芯からキリリと絞まって気分はハイになる。祭だ祭だおみこしだ。こんな気分がたまらない。

 ウゥゥとうなるような神主の祝詞を聞きながらはちまきのカブリを手に取って頭を垂れお払いを受ける。こんな儀式を受けながら日常の自分からどんどん解放されて行く。オミキをグイーと飲み干してシャシャシャンと一本手拍子を打ったら「ソレー」とばかりにみこしを担ぐ。もう完全にはまってしまう。ソィヤ、ソィヤと、かけ声あげて無心に担ぐ。何も考えずにただ無心に担ぐ。じわじわと首筋に汗が流れ出る。みこしが上下する。担ぎ棒が汗で滑ってくる。肩に重さがジワジワかかってくる。ソィヤ、ソィヤと、かけ声をあげる。みこしのまわりに見物客が集まってくる。カメラマンがバシバシとストロボフラッシュを浴びせる。ライトが目の前でパッと明るくなる。テレビカメラのレンズが下からのぞき込むように迫ってくる。笛とかけ声の騒音のなかで非日常性の極致に入り込む。女性は胸までさらしを巻いて、みこしにどんどん乗りたがる。まるでお立ち台に乗って踊り狂うようなものだ。みこし会場はいわば長岡のジュリアナ東京だ。

暑中お見舞い申し上げます。


平成5年8月「暑中見舞」用に作成


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Last Updated: 4/28/96