「男優では、石川啄木と谷崎潤一郎の暗部を憎憎しく演じ切った井上公則が出色の出来だった。」
http://comnet.ge.niigata-u.ac.jp/writing/syndrome.html
新潟大学人文学部齋藤陽一先生の劇評より
勇次郎 ・・・石川啄木 谷崎潤一郎
「ゴホンと言えば龍角散」
石川啄木に扮するユウジロウ(井上さん)
金田一京助に扮するユタカ(山本さん・左)と石川啄木に扮するユウジロウ(井上さん・右)
井上さんは穏やかな人だ。
彼は、今まで演出家として演劇の指導者として県内で活躍してきた人だ。
そんな彼が役者をやるという。
十数年ぶりに役者をやるという。
今まで自分が指導する立場だった彼が、指導を受ける立場になるということは勇気のいることだ。
今までああしろ、こうしろと役者に怒鳴り散らしてきた彼が、今度は怒鳴られる立場になる。
それも、自分が怒鳴り散らした役者と一緒に役者をやるという。
勇気のいることだ。
そんな気持ちにさせた人物が上杉祥三だ。
彼の中の上杉祥三という人物の偉大さが心を動かした。
上杉氏の指導を受けられるならば恥をかいても良い。
そう思わせたのであろう、彼は上杉氏のもとへやってきた。
最初は新潟から通ってきた。ところが途中から長岡に転勤になった。
転勤の挨拶が一段落して、ここからようやく彼が芝居に打ち込めるようになる。
遅まきではあったが段々加速がついてきた。
加速がついてくると彼の調子が乗ってくる。
ようやく昔の勘が戻ってきたところで本番。
ここからもう少しもんでいけば、何かをつかみそうにと思える状況で時間切れ。
そんな感じのする彼であった。
今しばらく役者に精進するだろう。