JTRI 租税法研究 知新会 会報

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発行人 菅納 敏恭

<Talking on tap>

ヒポクラテスの誓い


 実際に実行されている「職業倫理」はその職業の社会的地位に大きな力を持っています。  たとえば「賭博」と「保険」、その基本構造は同じだと思うのです。本質が違うなんて、僕にはどうも分かりませんなぁ。しかし賭博に入れ込むのは、女房子供友人知人親戚一同こぞっての非難の的となりますが、いろんな保険を趣味のようにかけていても、まぁ呆れられる程度で非難されることはないでしょう。博徒は許されないが保険会社は街の表通りに堂々たるビルを構えています。  職業倫理、行動倫理の違いでしょう。
 街場の「手形金融業者」と「銀行」はともに今日困っているヒトにお金を用立てて利息を稼ぐご商売です。同じご商売といっても銀行はバブル時代に身の振り方を誤るまで、経済界の尊敬される一員でした。まぁ、弁護士さんとその筋の事件屋さんもトラブル・ショッターとしては隣接した業界です。  職業倫理、行動倫理の違いでしょう。
 社会に有用な職業として認知され、業界の地位が確保されるスタートラインは、業界の自らを律する職業倫理のように思います。  民間法曹の発足の地、英国ではいまでも民間組織である三つの弁護士会が司法試験をしています。今もって国家試験じゃないんですよ。国家に裏判を押してもらったバッチじゃないから時に権力に対抗する気概が持てるのでしょう。英国の会計士制度も会計士協会の試験だそうですね。このことは松井宏会員も研究発表した名古屋の日税連統一研究発表会で知りました。  翻って我が税理士業界、国の監督権から独立とかを声高に主張する方はいても、税理士は国に裏判を押してもらう国家試験から独立して民間資格になろう、国に保証されるより、業界の倫理、気概で業界の権威と誇りを保とう、なんて考えはてんからありませんね。  開業後の業務内容、倫理基準がその業界の社会的地位の基盤です。資格試験が難しいということが誇りの根源であると言うのなら、「囲碁の初段」の方が希少価値です。  今 僕は JTRIの機関誌「税研」の編集委員になっています。  その編集企画会議で、雑誌のテーマに専門家としての‘倫理’とか‘心構え’とかを取り上げたらいい、なんて幾つになっても書生っぽいことを言っていたら、椅子を並べさせていただいている 武田昌輔 博士から「ピポクラテスの誓い」を頂戴しました。  古代ギリシャで、医学を初めて迷信から独立させた人、ヒポクラテスの誓いは現在日本でも一人前の医師となるとき誓う、医師の倫理基準だと言われてます。  そのピポクラテスの誓いのコピーを下さった武田博士は、ここに出てくる「医業」という言葉を税務ないし税理士に置き換えれば、そのままだろう、と言われました。
 如何でしょう ?


ピポクラテスの誓



医業にたづさわることを許されたからには
全生涯を人道のために捧げる

恩師に対して尊敬と感謝を捧げる

良心と威厳をもって医を実践する

患者の健康と生命が第一の関心事である

患者の打明けるすべての秘密を厳守する

医業の名誉と尊い伝統を保持する

同僚は兄弟と見なす

人類、宗教、国籍、政党、
政派及び社会的地位の如何によって
患者を差別しない

人間の生命を受胎の始めから
至上のものとして尊重する

如何なる弾圧に遭うとも人道に反した
目的のためにわが知識を悪用しない

以上は自由意志によりまた名誉にかけて
厳に誓うものである


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Last Updated: 7/12/96