JTRI 租税法研究 知新会 会報

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発行人 菅納 敏恭

<Talking on tap>

日本の民主主義はいま何歳?


このコーナーの片隅に Talking on tap と書き付けていたら、これは何んだ、ということになりました。 on tap とは、ビールなんかの樽に口切りがしてあって、まぁ樽出しの状態。新鮮な話。つまりあふれるばかりに話したい話。もう記憶の彼方、学生時代に読んだ、たしかジョイスの短編の中に出てきた表現です。欧米人に通じるかどうか自信がありません。しかし、酒場の与太話、酔っぱらいの 世迷い言 みたいで、ちょっと気に入ってた言葉です。

まぁ、僕はホテルのバーなんかでうだうだと、どうでもいい話をするのが好きです。

先日、友人とバーで、日本も変わったね、という話をしてました。例えば、「ドライブ」という家族レジャーが無くなりました。そうそうレジャーと言う言葉自体無くなりました。「海水浴」「ハイキング」というものも聞かなくなりました。「内職」という言葉も無くなったから豊かになったんでしょう。「同棲」「家出」「団らん」という言葉も聞かなくなりましたね。日本の家庭が変わったんでしょう。

日本の民主主義は12歳だ、と言ったのは誰だったでしょう。あの頃からしばらくは「封建的だ」という非難の言葉がありましたね。基本的人権という言葉も輝いていました。個人主義とか民主主義という価値がありました。あの終戦から もう 49年。いま戦後の民主主義を振り返るということは、背広に中折れ、自動車も走るモボモガの大正時代になって明治の“御維新”を振り返るようなものです。

「ニューヨークのセントラルパークなんて行くと、確かにいい公園だと思うものね。どこ歩いても、座っても自由だから。ところが日本に戻ってくると、柵がしてあって、立入禁止と書いてある。それで歩くところは砂利道。芝生がいいなあと思っても入れない。一応形だけは造っているんだけど、本質的にどうして公園があるかということは何も考えていない。・・ 自由とか民主主義とかを自分たちが血と汗を流して勝ち取ったものじゃなくて与えられた。知らないものを与えられて、みんなでいじくり回して壊しちゃったんだろうね。

いいオートバイをアメリカからもらって、それを分解してみんなでもう一回ちゃんと相談して造りなさい、と言われて、何かとんでもないものを造ってしまった。ようするに、オートバイをもらったのに、自動車を造っちゃった。だからどうしても車輪が二つ足りなくなる。・・どうしたって走れないんだよ。しょうがないから、政治家が後ろを持ち上げて無理やり動かそうとしている。そういう国なんだよ。」

ビートたけし著『だから私は嫌われる』新潮社 1993

最近は、同じ民主主義といっても日本の社会システムが米国型決定システムとは別なものであること、微妙にちがうことが理解されてきました。いまでは米国型社会が到達目標でそれに向かっていま何合目、という考えだけではなくなったようです。

「日本では経営者支配に対するコントロールがアメリカに比べて弱く、日本では社長はオールマイティともいわれています。そういう面はたしかに強いのですが、完全に社長がオールマイティかというと・・・・日本は全員一致の国ですから、いかなる反対があっても自分の一存で押しきることができる社長はあまりいないので、社長があの男を後継者として指名したいと思っても、従業員、取引先、マスコミ、官庁などいろいろなものが足を引っ張って、その思いどおりにさせないケースも、多分にあると思います。」

江頭憲治郎 稿 『日本の会社と会社法』(石黒一憲他著『日本法のトレンド』有斐閣 1993)

そう日本は “和をもって尊しとなす” 国だったのです。会社法の実際を含め、租税法、家族法などについても日本法の本当の特色、現実社会の法実践はまだ充分に研究されていないようです。

今年は「国際家族年」。

現在日本の家族像を見据えて、年間テーマは『家族法と租税法の交錯』です。

(ビート としやす)


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Last Updated: 7/07/96