< Pigeon like a claypigeon >

鳩が 豆 喰って、ぱぁー


 旅支度をするとき、忘れ物をしない方法があります。

 自分の両手で身体を頭のてっぺんから順に触っていくのです。頭を触って帽子。髪の毛を触ってシャンプー、櫛。目に来て眼鏡。耳を触って耳かき。口では歯磨き歯ブラシ、‥‥といった作法です。この伝で足の先までいき、靴下、靴、スリッパとなるのです。

 経験からするところ、旅支度の小物を確認していく最良の方法です。しかし多少難点もあります。これは人の見てないところでやった方がいいでしょう。ブツブツいいながら自分の体をなぜていくさまは、ちょっと人に見せられない所作です。出張の前の晩、洗面所の鏡の前でひとりおやりになることです。


 ものを考えるのに、一定の基準を利用するのは考え方のテクニックです。これを詳細に作成すれば、マニュアルです。

 時間というのもよく使われる基準です。頭の中ででも、時間の流れに応じてリハーサルをすることはチェック方法として、汎用性があります。今日一日の予定を確認しながら準備をする、一週間の予定を手帳で確認するなんてことは誰でも良くするでしょう。また重要な行事については開会から始まって、どういう順番で誰が何をするか、式次第をつくります。たとえば、結婚式などぶっつけ本番というわけにいきませんね。ものを考えるとき、時系列を‘定規’として使うわけです。

 問題を考えるとき諸外国の例を探すのも、定石です。空間的に‘定規’を探そうということでしょうか。ですから諸外国といっても経済状況が日本と似ている欧米先進国、まちがってもブータンや中央アフリカ共和国の例は出てきません。

 経験の積み重ね、思考を外国に借りるという手法です。


 考えてみると、法律上の立法テクニックである「みなす」規定は、元になる条文規定の思考と経験を借りようという手法です。立法目的から必要を感じて、本来異なるものを同じに取り扱おうというのです。

 したがって「みなす」規定を解釈するときには借りてくる‘定規’が正しいか、なんのために借りてくるのか、がいつも問われることになるわけです。


 ここで人にお教えしていない取っておきの知恵を授けましょう。忘れ物防止の‘定規’です。

 男が家を出るとき、忘れ物がないか、玄関先で唱えるオマジナイです。

「鳩が豆喰ってぱぁー」

     ハ・ト・ガ・マ・メ・クッ・テ・パー

ハ:ハンカチ

ト:時計

ガ:がま口(つまり財布・お金)

マ:マッチ・タバコ

メ:眼鏡

ク:靴べら(ちょっと古いね)

テ:手帳・筆記用具

パ:パス(定期券)

 これまで私があまり人にお教えしていないのは、人に言えないほどバカバカしいためですが、まぁ気を取り直して、皆さん、ご一緒に。

        鳩が豆喰ってパー!


今年、年間テーマは「租税法における“みなし規定”」。知新会は、認識と解釈ということを考え直します。

(鳩が豆鉄砲くらったような話ばかりの カンノ 記)


租税法研究 知新会 会報より 発行人 菅野敏恭


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Last Updated: 5/14/96